探偵言いたい放題

ひと夏に一回登場する迷いの壮年

 初夏のこの時期になると必ずかかってくる電話がある。その電話がまたきた。年老いたかすれた声。その時ぴんときた。あの壮年の依頼人だ。
 去年、この壮年が依頼してきたのは次のような内容であった。
 今、1人で住んでいる家(40坪程度の古い一戸建)に泥棒が入り困っており、現金関係も盗まれていないので警察も相手にしてくれないので調査して欲しい。犯人は大体わかっており、実の弟だという。いつも畑に出ているとき(壮年は農家)に裏から侵入して部屋を荒らしていくというのである。頻繁に侵入されているのでこの事実を確認して欲しいという依頼である。
 しかし、いくつかの疑問点が残る。
 まず、1つに「なぜ何も盗んでいかないのか?」である。依頼人に確認をとる中で原因について大体絞り込んでみた。結論としては、土地などの遺産関係について弟が何かを探っているのではないか?しかし大した土地もなく遺産といえる程のものではないのが現実であった。もちろん他にその理由は見つからない。
 次に、「裏の侵入口及び侵入経路について?」。侵入口はガラクタやゴミ類が非常に多くこれらを取り払って中に入り込むことは非常に困難である。また、裏の畑の隠れるという場所も見たが、確かに前後からは隠れることができるが、横の道から丸見えである。本当にこのような侵入経路から入り込むのか見たいものだと思った。
 他にいくつか裏を取りながら我々が判断した結果は「だれも泥棒には入っていない」である。しかし依頼人が調査を依頼する以上受件するのが我々の仕事である。
 早速調査に入った。調査内容は壮年が留守のときに家にだれか侵入するかである。
 数日間調査を実施したが侵入どころか来客もなくだれの出入りもなかった。
 壮年に結果を報告し、また、総合的な判断を話すと納得していた。
 そのまま調査を打ち切ることにした。
 そしてまた今年同じように同じ時期に依頼がきた。去年のことを話したが調査して欲しいとのことである。
 しかし、なぜいつもこの時期にだけ依頼がくるのか?内容を聞く限り別にこの時期でなくてもいいようなきはするが?
 この時期にお金を使いたい訳でもあるのか?他にお金を使うことがないのか?どうあれ我々としては嬉しいお客様である。
 疑問の多いまま今年も夏のはじまりを告げる調査に入ることになった………